「どうだい部活のほうは?」
いいタイミングだと思った。なかなか言い出せないだろうと思ったけど
いまならスラッと言えそうだ。
「あの…実は…」
「君をはじめて見たのは3年前だったかな…」
監督も…またあのときの話か…
もういいだろ?もうサッカーから離れるんだから。
もう2度と思い出すこともない。あのトロフィーもどこか
2度と目に入らないところにしまう。
「あれはよみうりランドだったね確か?埼玉代表の強豪でもない
クラブの下部組織でもない小さなチームが圧倒的な強さで全国優勝。
得点王は小学4年生。今でもよく覚えているよそれだけ衝撃だった。」
返す言葉もない、すべて事実だ。消したい、でも消えない過去。
それほどあの時は騒ぎ立てられた。ただ多くの人が3年という時の流れとともに
忘れていった。忘れてくれた。
「今でも覚えているよ、元気にフィールドを駆け回っていた君を
サッカーを楽しんでやることがどれだけ大切なことかを再確認させてもらったよ。」
その少年が今、そのサッカー生活にピリオドを打とうとしてることなど
だれが想像できるだろうか? もう聞きたくない…
「あのっ、俺…」
「ある元Jリーガーの話だけどね・・・彼は誰もが知る選手だった。
そして彼らの世代皆はディエゴ・マラドーナに憧れた。彼も例外なく彼のプレー
に憧れ真似をしたそうだ。でも彼は今思えばマラドーナ気取りでお山の大将をやっていたあの時間は本当に無駄だったと語っていた。」
聞いたことはある、清水エスパルスの…、でもだから何なんだ?
俺はJリーガーでもないし、マラドーナもすごいとは思うが次元が違う。
とても真似して見ようなど思わない。
「誰かに憧れ、その選手を真似るということはとてもいいことだ。ただ危ない面もある
自分とは全く違うタイプの選手のプレーをまねして貴重な時間を無駄にして
しまうこともある。」
「君は誰のプレーを真似している?誰になろうとしている?」
「君はあの時に比べたらうまくなった、ただその代わりに失くした物の方が大きいのでは?何というか小さくまとまってしまったね」
「でも私はまだ手遅れとは思わない」
「君を一番知る人に聞いてみたらどうだ?」
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