サッカーの神様」更新第27回目

身の入らない練習、ただ部活に参加しているだけ。
そんな日が何日も続いていた。
あのときの自分は自分が嫌いな3年と似たような
ものだっただろう。

監督が職員会議で来れないときは
コーチはあてつけのようにミニゲームで
俺をボランチやCBで起用する。
…あてつじゃないのかもしれない。

中学に入って数ヶ月、成長期に入ったのだろうか、
自分でも分かるほどに体は大きく、「男らしく」なってきている。
身長は優に周りの同学年を超え、さらには何人かの
2年、3年とも肩を並べるほどになっていた。

そんな自分は少なくともFWでゲームに参加しているときよりは
チームの「一部」として動けている。
そのことがさらに自分を悩ませ苛立たせていた。

辺りはもうすでに暗く街灯の光がはっきり見てわかる。
帰り道、いつのまにか足は止まっていた。
考え事をしてるときは自然と足が止まってしまう。
昔からの悪い癖だ。
一人で帰るときはどうしてもいろいろ考えてしまう。

「長谷川か?」

後ろから誰かに呼びかけられる。
聞き覚えはあるが馴染みのない声。
振り向いた先にいたのは荻原さんだった。



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サッカーの神様」更新第26回目


晩飯をすましシャワーを終え自分の部屋に戻る。
暗闇の中机の明かりだけをつける。
そしてベッドに倒れこんだ。
「13歳でこんなに悩んでるやつっているのかよ・・・?」
中学生という新しいスタートを切り、皆は活気に満ちている
新しい友達ができ、学校生活、部活動を楽しんでいる。
それに比べ俺は何も変わっていない、
いやむしろ悪くなってきている。
うまくいかないサッカーの事ばっかり考え、それ以外のことは
まったく楽しめていない。
心の片隅には悩むことはテストのことだけでそれ以外は
バカな事を言ったり、昨日のテレビはこうだった。
あの芸人はおもしろい。とか心のそこから笑って
学生生活を送りたい。そう思っている自分もいる。
大好きなサッカーが生活の重荷になってきている。
悩むことなくサッカーを楽しむには?
そんなうまい考えが今の俺にあるのか?
ないわけではなかった。
入部したときの紅白戦、
少なくともそこにはボランチとして評価されていた自分がいた。
最近そのことがよく頭によぎる…

じぶんのやりたいFWとして苦しみながらサッカー
続ける意味があるのか?
評価されたボランチとして新しいスタートをきったほうが…

いつもは気にならないものがやけに目に付き苛立たせる。
それは机からの明かりを受け薄暗い部屋の中ひときわ輝いている

【第〜回 全国少年サッカー大会 得点王】

何かが頭の中で切れた。
スイッチが入ったようにベッドからとびだす。
そのトロフィーを手に取り、大きく高く振り上げ振り落とす!

腕を勢いよく振り下ろしたあとも手にはまだトロフィーが。
できない…
できることなら壊したかった、引きずってる過去を精算したかった。
けれどあのときの思い出がどうしても頭の中によぎる。
もうどうすればいいのか自分でもわからなかった。


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サッカーの神様」更新第25回目

うまくなる方法なんてわからない。
ボールを多く蹴るしかない。
もっともっとボールに触れる。
それしかない。
サッカーをこれからも続けたい…
遊びで終わらしたくない…

試合の帰り道八千代と分かれた後
足は家路の上にはなかった。
行き着いたのはなじみの公園。
日も暮れ始め人数は少なく。
わずかに涼しさを感じさせる風が
ひぐらしの音色の中体に触れる。

片付けの誰かが必要以上にボールを詰め込んだんだろう
大きく膨れ上がったかばんを地面に下ろし
ボールをひとつ取り出す。
そしてなりふりかまわず壁をめがけボールを蹴る。
何も考えることなく無我夢中に跳ね返ってくるボールを
ダイレクトで壁に打ち込む、そうすることで気持ちが楽になる。

けど理想と現実は違う。
自分に跳ね返ってきたボールをダイレクトで思い通り
狙ったところに打ち返す技術なんてあるはずもない。
跳ね返ってくるボールに大きく左右に振られ
息を切らす、さらにはボールは壁を越えて茂みに入る…

頭の中でDFをイメージし、ドリブルを始める。
1人…2人・・!?
フェイント時にボールに足を取られ無様に転倒…
頭の中でイメージした自分の背中ははるか向こう
次々とDFを抜いていく…

夜の公園で絶望の中座り込む
あの場面… 相手の足より先に足はとどいていた…
ボールは俺の足にしかあたっていない。
完全な俺の実力不足…

座り込み視界に入った擦りむいたひざをみて思う

いつからだろうサッカー
楽しくなくなったのは。
自分でもわかっていた。
思い出したくないあの頃が、一番サッカーを楽しんでいた。
もう一度サッカーを楽しみたい・・・
自分の中で一つの答えが徐々に形を作り出していた。


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サッカーの神様」更新第24回目


監督が試合に出た選手を集める
いつもは試合後のグラウンドの慣らしやネットの取り外しを
しながら視界に入っていた円に自分が入っている。
何を言われるだろうかびくびくしながら時がたつのを
じっと待っていた。

結局監督は俺のプレイはおろか俺の名前すら出さず
3−0の試合結果に声を荒げることもせず
修正箇所を淡々と述べ選手を解散させた。

3年はこのあとゲーセンに行く段取りをしている。
荻原さんは相手の5番と何かを話している。
きっと代表のことだろう。
日本代表
日本でサッカーをしているもの誰もが夢見る
青と白の色鮮やかなユニフォーム
ただ今の俺にはどうあがいても届かない
わずかな希望さえない。
全国の天才といわれる選手が集まり
ふるい落とされる過酷な場所。
あの2人のとても同世代とは思えないプレーを見せられ
夢は現実という重みにあっけなく壊れ
見ることさえおこがましい、そう感じるようになった。
サッカーを続ける価値があるのだろうか?
そんなことさえ考えていた。


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「サッカーの神様」更新第23回目


誰もが不意をつかれる、敵も見方も。
相手の5番も例外ではない。
ボールはキーパが出れないぎりぎりのところに
緩やかな軌道を描き流れ込む
体は5番より早く反応した
5番の気配をすぐ後ろに感じてはいるが
視界にあるのはボールと冷静さを失っているGK
ボールとの間には誰もいない。
荻原さんからの最高のクロス
決めたい!
落下点に走りこむ。
この勢いのまま頭から飛び込み押し込む
フィニッシュまでの迷いはなかった。
決めれる!
「!?」
そう思った瞬間体のバランスが後ろに崩れる。
5番の体が横に並ぶ。
「くそっ!!!!!」
歯を食いしばりボールに向かい足から飛び込む。
5番も負けじと足を伸ばしクリアをはかる。
…キーパーは一歩も動かぬまま空を見上げる。
ボールは空高く大きくゴールマウスを飛び越え
試合終了のホイッスルが響き渡った。


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