小説 サッカーの神様

オリジナルストーリーのサッカー小説です。現在は中学生編ですがいずれ世界へと展開していく予定です。現在は長谷川莉汪を主人公とした中学生編です。
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小説「サッカーの神様」 更新第36回目 

機嫌を損ねている菜緒、いつもならからかって売り言葉に買い言葉に
なるか、俺が菜緒の機嫌がよくなるまであやまるんだが,ドアを開けた
まま自分の後ろでて立っている菜緒に顔だけ向けすぐに話を切り出した。
「菜緒、聞きたい事がる。」
最近家に来なかった俺がここにいること、
そしていつもは見せない深刻な顔で菜緒はすぐに
いつもと違うと悟ったのだろう。

普段は元気で明るい、悪く言うとがさつなところもある菜緒だけど
回りに気を使える、言葉として発しなくても人の気持ちを理解できる。
「どうしたの?」
その一言を引き金に俺は全てを菜緒に話した。

荻原さんに言われたこと、監督に言われたこと
いつからかサッカー自体がうまくいっていないこと
サッカーを辞めようとさえ思っていたこと
「俺あの時と比べて成長してないか?あの時と何が違う?何か変わった?
何かあったら何でもいい、気にしないから言ってくれ!!」
「う〜ん・・・」
指で口を触りながら目を明後日の方向に向けて考えるのは菜緒の昔からの癖だ。
俺は無言でその目線が自分に戻ってくるのを待つ。


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小説「サッカーの神様」 更新第35回目 

帰り道、ぼんやりと道を照らす街頭が次々と過ぎていく。
無我夢中で走った。
俺を一番知る人、それを聞いた時もうあいつしか思い浮かばなかった。

自分の家を通り過ぎ着いたのは長谷川ではなく小林の表札。
中学に入ってから菜緒が来る事はあっても、俺から行く事はなかった。

「あら莉汪ちゃん?最近めっきり来ないから・・・どうしたのそんなに慌てて?」
「はあ・・はあ・・おばっ・・ちゃん」

学校から一度もとまることなく全力で走って帰ってきた今は
息が切れてなかなか声がでない。途切れ途切れになりながらも
菜緒がいるかどうか聞いたがちょうど近くのコンビニまで使いに
行っていないらしい。待ってもいいか尋ねると二つ返事で返答が返ってきた。

そして今座って待っているのは菜緒の部屋・・・
菜緒の部屋に入るなんて一年ぶりくらいだろうか
俺の部屋には未だにノックもしないで入ってくるくせに
そのくらいの時期から菜緒は自分の部屋に誰かが入るのを嫌がりだした。
少し早い思春期ってやつか?早いかどうかは知らないけど。
そういえば部屋の中もだいぶ変わったかな、昔はディズニーだのキティーちゃん
だの部屋中がそれで埋められていたが今はそれも半分くらいになり代わりに
流行の歌手のポスター。菜緒も普通の女の子かとふと思った。

下から菜緒の声が聞こえる。
なにやら声を張り上げている。多分・・・
「あんたも断りなさいよ!!」
そう言いながら少し不機嫌そうな顔で部屋に入ってきた。
やっぱりおばちゃんが勝手に俺を部屋に上げたのを怒っていた。

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小説「サッカーの神様」 更新第34回目 

「どうだい部活のほうは?」
いいタイミングだと思った。なかなか言い出せないだろうと思ったけど
いまならスラッと言えそうだ。

「あの…実は…」
「君をはじめて見たのは3年前だったかな…」

監督も…またあのときの話か…
もういいだろ?もうサッカーから離れるんだから。
もう2度と思い出すこともない。あのトロフィーもどこか
2度と目に入らないところにしまう。

「あれはよみうりランドだったね確か?埼玉代表の強豪でもない
クラブの下部組織でもない小さなチームが圧倒的な強さで全国優勝。
得点王は小学4年生。今でもよく覚えているよそれだけ衝撃だった。」

返す言葉もない、すべて事実だ。消したい、でも消えない過去。
それほどあの時は騒ぎ立てられた。ただ多くの人が3年という時の流れとともに
忘れていった。忘れてくれた。

「今でも覚えているよ、元気にフィールドを駆け回っていた君を
サッカーを楽しんでやることがどれだけ大切なことかを再確認させてもらったよ。」

その少年が今、そのサッカー生活にピリオドを打とうとしてることなど
だれが想像できるだろうか? もう聞きたくない…

「あのっ、俺…」

「ある元Jリーガーの話だけどね・・・彼は誰もが知る選手だった。
そして彼らの世代皆はディエゴ・マラドーナに憧れた。彼も例外なく彼のプレー
に憧れ真似をしたそうだ。でも彼は今思えばマラドーナ気取りでお山の大将をやっていたあの時間は本当に無駄だったと語っていた。」

聞いたことはある、清水エスパルスの…、でもだから何なんだ?
俺はJリーガーでもないし、マラドーナもすごいとは思うが次元が違う。
とても真似して見ようなど思わない。

「誰かに憧れ、その選手を真似るということはとてもいいことだ。ただ危ない面もある
自分とは全く違うタイプの選手のプレーをまねして貴重な時間を無駄にして
しまうこともある。」

「君は誰のプレーを真似している?誰になろうとしている?」

「君はあの時に比べたらうまくなった、ただその代わりに失くした物の方が大きいのでは?何というか小さくまとまってしまったね」

「でも私はまだ手遅れとは思わない」
「君を一番知る人に聞いてみたらどうだ?」

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小説「サッカーの神様」 更新第33回目 

「目障りなんだよ」
キャプテンが鬼の形相で俺の胸ぐらを掴む。
真剣にサッカーをしているキャプテンが集中力を欠いている
1年を「教育」する。そうだったら去年だって優勝できたかもよ。
このキャプテンもほかの3年と同じ、ただ3年ということと周りより
うまいということでキャプテンをやっているが、最近は1個下の荻原さん
が実質的チームの中心になってかなりイラついている。
「点も取れないのに前でうろうろされたら見てるだけでうっとうしいんだよ。」
後ろにいるもう一人が俺に近づき髪の毛を掴む
「辞めろよお前、才能ねーよ わかってんだろ自分でも?」
お前とあんまりかわらねえだろ…、お前らなんて2年の強さにすがって去年
のベスト4を自慢しているただのピエロじゃねえか。
それにお前に言われなくても…
「おい!監督だ!!やめろ!行くぞ!!」
そう言っていっせいに足並みそろえて去っていった。
助かった・・・
今日の「キレ」具合は普通じゃなかった。
あのまま続けば確実に無事には帰れなかっただろう。

「どうしたんだい?長谷川君」
「あっ、いえ、あの…」
「何かあったかい?」
「いえ… 何もないです。大丈夫です」

いくら自分がやられてもサッカー部には迷惑をかけたくない。
もし自分がちくって部活停止になったら、荻原さんに、がんばっている
2年の先輩に申し訳ない。たとえ自分が辞めるとしても…

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小説「サッカーの神様」 更新第32回目 

荻原さんがあの頃の俺を知っていた。薄暗い帰り道また足は
止まってしまっていた。

俺はうまくなった。自惚れているわけではないけど少なくともあの頃に
比べてうまくなった。自信はある。なのに・・・ 

「全くわからなかった」

それはあの時からの自分のサッカー人生を否定されたかのような
一言だった。ポジションを変えて出直すつもりだった・・・
けれどこれまでのサッカー人生を否定されたことで頭の中で形を留めて
いなかったもう一つの選択肢が徐々にその姿を現し始めた。

あの日から一週間がたった。一週間悩み続けているがもう答えは
出ているような気がした。もちろんこんな状態で練習に参加しても何も手が付かない。
ドリブル練習ではコーンにぶつける、シュート練習ではボールはあさっての
方向へ行く、ミニゲームではそれに加えてトラップミス、ボールに追いつ
けない。毎日が何の変化、成長を感じることもなく過ぎ、気付けば1週間
が終わっている。そんな俺が3年の格好の的になるのは仕方なかった。

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